Universal Audio Sphere LXをレビュー。マイクモデリングシステムで音を自在に作り込めるコンデンサーマイク

Universal Audio Sphere LX

評価:4.5

ぎたすけ

モデリングシステムって色んなマイクをシミュレートできる的なやつ?

たけしゃん

そうだね。有名マイクのモデリング以外にも指向性とかマイクの組み合わせとか色んなことが調整できるよ
補足

レビューするためにフックアップ様からデモ機をお借りしました

Sphere LXの評価
音質
 (4.5)
使いやすさ
 (5)
価格(14万円程度)
 (4)
総合評価
 (4.5)
メリット
デメリット
  • 有名マイクをモデリングした音が使える
  • マイキング等を録音後に補正できる
  • 元々のマイクの音質も良い
  • 原音が大きく変わるような補正はできない
  • 生楽器収録ならSphere DLXのほうが良い

ボーカル(LD-47K)

アコギ(LD-47K)

補足

記事内ではマイクモデリングシステムを利用した比較音源を多数掲載しています

この記事の著者
音楽ブロガーたけしゃん

ミュージシャン

たけしゃん

tkshan

プロフィール

ギター弾き語りのシンガーソングライター。長年の音楽活動や音楽の仕事で得た知識・経験を基にブログを書いています。
雑誌の音楽記事執筆、音楽専門書の執筆(工学社)、nana公認クリエイター、IPC VOICE STUDIO公認ボイストレーナーです。
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Universal Audio Sphere LX

Universal Audio Sphere LX 正面
マイクタイプ XLRコンデンサーマイク
※5ピン XLR
感度-39 dB (11 mV)
ref 1V @ 1 Pa, 1 kHz
周波数特性20Hz – 20kHz
最大SPL145 dB
重量545g
公式HP

モデリング・マイク・システムを使った革新的なコンデンサーマイク Universal Audio Sphere LX

専用プラグインを使って、様々な有名マイクをモデリングして収録することができるマイクです。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン U87のモデリング

使ってみるとマイクのモデリング以外にも、かなり色んなことができます。

音が良いことはもちろん、触っていて非常に楽しいマイクでした。

まずは製品仕様から細かく解説していきます。

仕様を飛ばして、レビューを読みたい方は<Sphere LXをレビュー>を参照ください。

製品仕様の目次

5ピン XLRのコンデンサーマイク

Universal Audio Sphere LXのXLR端子部分

Sphere LXは5ピンのXLR端子が採用されており、専用の3mケーブルが付属しています。

Universal Audio Sphere LX 専用ケーブルの端子部分
オス側の端子は3ピン

また、本体のマイクカプセルはフロントとリアのデュアルとなっており、ケーブルも二又に分かれています。

Universal Audio Sphere LX 専用ケーブル
右側の端子、黒がフロントで赤がリア

専用プラグインはこのフロントとリアで録った音声を相互に使って、指向性やマイク距離などシミュレートするようです。

最終的に専用プラグインからはモノラル音声が出力されます。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン U87のモデリング
専用プラグイン

オーディオインターフェイスなどへの接続も2つのチャンネルに繋げるようになっています。

Universal Audio Sphere LXをオーディオインターフェイスに接続する際は2つのチャンネルを使う

なお、公式マニュアルでは接続した2つのマイクプリアンプのレベルを揃えるように記載があります。

そのため、チャンネルリンクを使って管理することを推奨しています。

チャンネルリンク

2つのモノラルチャンネルをリンクさせて、1つのステレオチャンネルとして扱う機能

アナログの連続ゲイン型プリアンプの場合は目視では調整が難しいため、Sphereのキャリブレーションモードを使って合わせましょう。

Universal Audio Sphere LX キャリブレーションスイッチ

マイク背面のスイッチをCALに切替、専用プラグインでキャリブレーションすることができます。

なお、専用プラグインを使う場合はステレオトラックでフロント・リアを認識させないとエラーメッセージが表示されるようになっています。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン。フロント・リアをステレオで認識させなかった場合のエラー画面
エラーメッセージ

一応、専用プラグインを使用しない場合は「フロントだけをモノラルで使う」といった使用もできます。

モデリング・マイク・システム

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン U87のモデリング

Sphere LXは専用プラグイン「Sphere Mic Collection」を使ったモデリング・マイク・システムが用意されています。

マイクモデリング以外にも色んなことができる、すごいシステムです。

まずはマイクのモデリングですが、有名マイクを中心に20種類のモデルが用意されています。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン マイク選択画面
Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン マイク選択画面2
Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン マイク選択画面3

コンデンサーマイクだけでなく、リボンマイクやダイナミックマイクも用意されています。

LD-47K(コンデンサーマイク)

DN-7(ダイナミックマイク)

RB-121(リボンマイク)

また、2本のマイクを組み合わせてサウンドを作ることもできます。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン デュアルマイク

LD-414 Brass

LD-414 Brass & LD-414 US

補足

マイクモデリングの数は別売りのUADプラグインを購入することで更に拡張できます

マイクのモデリング以外にも指向性、マイクの角度、近接効果の調整など、かなり細かい項目がプラグインで調整できるようになっています。

更にはリフレクションフィルターなどを使用する際にSphereの動作を最適化するIsoSphereという機能があります。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン リフレクションフィルター
人気の製品が網羅されている

リフレクションフィルターを使うことで反響と共に失われる美味しい音を調整・補完する機能ですね。

リフレクションフィルターEyeballを使って、テスト録音した音源がこちら。

KAOTICA EYEBALL

IsoSphere OFF

IsoSphere ON

IsoSphereも近接効果の補正ができるようになっています。

なお、マイクモデリングやIsoSphereなどの処理はレコーディング完了後でも適用できます。

マイキングを録音後に自然に調整できるのは画期的ですね!

Sphere Mic CollectionはPCで動作するアプリ「UA Connect」経由でダウンロードできます。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグインインストール

プラグインはUAD、HDXのDSPとネイティブで動作します。

Apolloと組み合わせるとDSPで動作するため、ほとんどレイテンシーなく専用プラグインを使えます。

Universal Audio Apollo Twin X
Universal Audio Apollo Twin X

ネイティブはVST2、VST3、AAX、Audio Unitsで動作するため、DAWなどを経由して使用することができます。

筆者はCUBASEで読み込んで使用しましたが、ネイティブでもレイテンシーはほとんど出なかったです。

ちなみにOBS STUDIOでも読み込んで使用できました。

なので、配信でもプラグインを使用することができます。

Sphere DLXとの違い

Universal Audio Sphere LXとSphere DLX
左からSphere LX、Sphere DLX
Universal Audio Sphere LX
Sphere LX
Universal Audio Sphere DLX
Sphere DLX
マイク
モデリング
20モデル38モデル
Sphere Mic
Collection
Sphere Mic
Collection 180
×
PAD
スイッチ
なし-20dB
付属品スタンドマウント
マイクケーブル 3m
スタンドマウント
ショックマウント
マイクケーブル 7.5m
実売価格14万円程度21万円程度
マイクモデリングは有償で拡張可能

Sphere LXには上位モデルのSphere DLXがあります。

Sphere DLXはマイクモデリングのモデル数増加、ステレオ収録への対応が追加されています。

Sphere DLXは専用ショックマウントも付属する

特にステレオ収録への対応が大きいですね。

専用プラグインのSphere Mic Collectionはモノラルのみでしたが、Sphere DLXにはステレオも対応できるSphere Mic Collection 180が追加されています。

Sphere mic collection 180の画面

このSphere Mic Collection 180が生楽器奏者には神プラグインなんですよね。

アコギのステレオ録音はマイキングやマイク選択で迷うことが多いですが、Sphere DLXなら録音後でも調整できます。

Sphere mic collection 180のマイク選択画面1
DLXはチョイスできるマイクも多い

後から使用マイクを変えたくなっても、録り直さなくていいので超便利です。

また、Sphere DLXはギター弾き語りをマイク1本で収録する際も便利です。

Universal Audio Sphere DLXで弾き語りを収録する
公式より引用

生楽器のステレオ収録で使う方は予算を何とか捻出して、Sphere DLXを購入することをおすすめします。

逆にボーカルRECだけなら、モノラルで良いのでSphere LXでも十分ですね。

付属品

Universal Audio Sphere LXの専用ケース
  • スタンドマウント
  • マイクケーブル(約3m)
  • キャリングケース

Sphere LXの付属品はスタンドマウント、マイクケーブル、キャリングケースの3点です。

スタンドマウントはマイクスタンドに接続する際に使用する一般的なものですね。

Universal Audio Sphere DLX スタンドマウント

マイクケーブルは5ピンXLRに対応し、2又に分かれた専用ケーブルです。

Universal Audio Sphere LX 専用ケーブル

長さは約3mなので、自宅利用ではちょうど良いです。

キャリングケースはかなりしっかりした大きいものがついています。

Universal Audio Sphere LXの専用ケース
Universal Audio Sphere LX専用ケースの中身

録音に必要なものは一通りそろっています。

audio technica AT-UMX3のバナー(PC)PR

Universal Audio Sphere LXをレビュー

Universal Audio Sphere LX 斜めから撮影
Sphere LXの評価
音質
 (4.5)
使いやすさ
 (5)
価格(14万円程度)
 (4)
総合評価
 (4.5)

それでは、Sphere LXを細かくレビューしていきます。

はじめにメリット・デメリットを箇条書きでまとめると以下の通りです。

メリット
デメリット
  • 有名マイクをモデリングした音が使える
  • マイキング等を録音後に補正できる
  • 元々のマイクの音質も良い
  • 原音が大きく変わるような補正はできない
  • 生楽器収録ならSphere DLXのほうが良い

Sphere LXの強みは何といってもモデリング・マイク・システムです。

録音後でも調整できるので、録り直さずとも音のニュアンスを微調整できるのはすごいですね。

レビューの目次

元のマイクの音が良い

Universal Audio Sphere LX 正面

Sphere LXを使って録音してみると、原音のマイクの音質が既に良いです。

そのため、マイクモデリングも原音を大きく変えるわけではなく、ニュアンスを少し足すようなイメージになっています。

ボーカル(LD-47K)

アコギ(LD-47K)

この点が非常に良いところだなと感じました。

どのモデリングパターンを使っても、不自然な色付けが全くないんですよね。

それでいて、特徴はちゃんと出ています。

例えば、アコギをペンシル型のSD-451にするとアタックがシャープで明るめの音に変わります。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン ペンシル型マイク

自然な範囲で微妙にニュアンスが変化する感じです。

このへんがアコギでよくあるモデリング系のエフェクターとは一線を画した素晴らしい出来になっています。

逆に原音を大きく変えることはできません。

色んな項目がありますが、音の変化は小さく自然な範囲で収まっています。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン デュアルマイク

あくまで録り音はそのままでマイクの特性やマイキングを変化させるものです。

また、マイクの選択肢も幅広いのが良いですね。

コンデンサーだけでなく、ダイナミックマイクの有名どころも揃っています。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン マイク選択画面2

指向性も9種類から選択できるため、ライブ配信でも重宝しそうです。

たけしゃん

配信で使う場合はDSPで遅延なく動作するApolloと組み合わせるとより良いですね

録音後に調整できるのが素晴らしい

Universal Audio Sphere LX 斜め下から撮影

Sphere LXの素晴らしいところは録音後に専用プラグインでマイク位置を調整できることです。

EQやノイズ除去系のプラグインとは異なる自然で違和感ない調整ができます。

例えば、アコギ録音でマイキングをややミスしても、録ったあとに直せます。

次の音源はマイク位置が近く、やや6弦の音が強く出てしまっています。

Gibson J-45

「Sphere Mic Collection」を使うと、録音後にマイクの近接効果を調整できます。

Sphere Mic CollectionのPROXIMITYは近接効果を調整できる
PROXIMITYは近接極性レスポンス量を調整できる
Sphere Mic CollectionのPROXIMITYを下げた
PROXIMITYを下げてみた

6弦の低域も大分落ち着いたサウンドになりました。

EQではこのような自然な調整は厳しいです。これはほんとにすごいですね。

その他、指向性だったり、マイクの角度なども後から調整できます。

マイクの角度を調整するAXISを使うと、ホール側とネック側の音を使い分けることができます。

Sphere Mic CollectionのAXISでマイクの角度を変えてみる
AXISでマイクの角度を変えてネック側の音にした

マイキングを変えたサウンドを混ぜたいときに再度録音しなくても作り出せるので、非常に便利です。

もちろん、録音時のマイクセットアップはちゃんとやるべきですが、録音後にこれだけ調整できるのはほんとにありがたいですね。

アコギで使うならSphere DLXが良い

Universal Audio Sphere LXとSphere DLX
左からSphere LX、Sphere DLX

Sphere LXも画期的で素晴らしいマイクですが、アコギ録りで使うならSphere DLXまで頑張ったほうが良いなとすごく思いました。

モデリング・マイク・システムはボーカルでも役立つんですが、やっぱり生楽器のほうが恩恵は大きいんですよね。

Universal Audio Sphere LX 専用プラグイン ペンシル型マイク

アコギなどは他の楽器やボーカルと混ぜてみると、マイクやマイキングを変えたくなることは割とありますからね。

そして、アコギなどで使う場合はステレオ収録は必要なので、Sphere DLXを選ぶべきです。

Sphere mic collection 180 ペンシルマイクのSD-451を選択
DLXはステレオ収録に対応している

しかもSphere DLXの専用プラグインを使ったステレオ収録が非常に優秀です。

Sphere DLXでステレオ収録した音声

プラグインで録ったあとにモノラル・ステレオを自由に変えられますし、2本のマイクのステレオ幅なども変えられます。

Sphere mic collection 180。2本のマイクのステレオ幅を変える
WIDTHでステレオ幅を変更可能

ステレオも含めてマイキング調整できると、自由度はかなり上がります。

自宅でアコギRECする機会が多い人はSphere DLXを持ってると、大分楽になると思います。

たけしゃん

予算があるなら、Sphere LXを2本買うという選択肢も強いですね

Universal Audio Sphere LX まとめ

Universal Audio Sphere LX 斜めから撮影
  • モデリング・マイク・システムで20種類のマイクを使える
  • 専用プラグインで録音後でもマイキングを細かく調整できる
  • モノラル収録に対応。Sphere DLXならステレオ収録も対応している

ぎたすけ

音の変わり方が自然な感じでいいな!

たけしゃん

そうなんだよね。自然で違和感ない音の変わり方だから生楽器でも重宝するね

Sphere LXのレビューでした。

レビューしていても、楽しくて色々試しちゃいました。

実用的なのはもちろん、色んな遊び方ができるので、すごく楽しいマイクですね。

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